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第193話 七不思議解明サークル①

Author: 霞花怜
last update Last Updated: 2025-10-19 19:00:33

 部屋の中に入ると、理玖と國好が待機していた。

 思わず気まずくて、目を逸らしてしまった。

「理玖さん、國好さん……、勝手に動いて、すみません」

 歩み寄った國好が、晴翔の背中から栗花落を降ろした。

「いいえ。白石襲撃に続き、大事な時に場を離れた俺の失態です。すみませんでした」

 栗花落を抱きかかえたまま、國好が頭を下げた。

「いえ……。國好さんが理玖さんに付いているって知っていて、俺が出ていったんです。もう少し早くに戻られていたら、俺が困ってました」

 理玖に付いていた國好が晴翔を迎えに戻ってから一緒に講堂の片付けに向かう予定でいた。

 タイミングとしてはギリギリだったろう。

 國好が悔しそうに首を振った。

「しかも空咲さんは栗花落を助けるために向かってくださった。警察官が一般人に迷惑をかけるなど、言語道断です」

 國好が悔しそうに栗花落を見詰める。

 栗花落の顔に理玖が手を伸ばした。

「僕のフェロモンがもう少し効果があれば良かったんですが。二日も経つと流石に無理だったみたいだね」

 フェロモンは短時間で単発的な効果しかないと、理玖は前に話していた。

 中々フェロモンが効かなかったと話していた鈴木の言から考えれば、理玖が保険でかけた鎮静フェロモンが全く効果がなかったわけではないのだろうが。助けるには至らなかった。

「俺と会う前に鈴木君のフェロモンを相当、吸わされたみたいで。その影響で栗花落さんは警官をやめてRISEに入ると、RoseHouseを守ると話していました」

 國好の顔が更に悔しそうに歪んだ。

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